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小田理恵子6

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【川崎市議 小田理恵子氏:第6話】改革をしたい自治体の方、ご連絡ください

「そんなことやっても票にならないじゃん」

加藤:どのくらいの期間、議員として活動されたいと思われていますか。
小田氏:あまりそういう感覚は持っていないですね。議員は自分がしたい仕事じゃなくて、市民から付託を得る仕事なので、あんまり議員でいることにこだわらない方がいいと思っています。私も弱い人間なので、それを気にしちゃうと票に結びつくかどうかということばかりを考えちゃうと思うんです。
 実は議員になった最初の頃に、「そんなことやっても票にならないじゃん」って、すごくがっかりする言葉をたくさん聞いたんです。
加藤:悲しいですね。
小田氏:悲しいでしょ。でも、政治にはそういう側面もあって、それは一概には責められることじゃないですから、自分が気にしないようにしています。
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政治の世界は『異分子』を嫌っている

小田氏:ちょっと視点は違いますが、結構、議員って病んでしまう人が多いんですよ。仕事のプレッシャーや辛い待遇の中で、メンタルを崩してしまう人がいるのです。
加藤:特に、人間関係が大変そうに見えます。
小田氏:改革したい真面目な人、一生懸命やりたいと思っている人ほど、議会の中でつまはじきにされてうまくいかない。そういう人には政治的な地盤がないので、誰からも助けてもらえずに「もう辛い、嫌だ、自分はここにいる価値もないんだ」と思って辞めていく。
 「本当は政治の世界に残ってくれた方が良いのにな」って個人的には思うような人たちが、地方議会から次々姿を消してしまうことは非常に残念です。
 やっぱり政治の世界には、過去の『予定調和』みたいな世界があって、ちょっと違う人間は攻撃の対象になることがあります。私は普通の議員のような選挙活動はしなかったのですけど、そのことは何年たってもいまだにすごい憎しみを込めて陰口をたたかれまくっています。
 でも、「これは私の選挙活動で、他の人には関係ないでしょ」って思っても、政治の世界ではそうじゃないのですよね。違うことをすること。違う発言をすること。違う生き方をすること。違う価値観を持っていること。そういったスタンスを持続させながら、『そのまま』でいることが、どれだけ難しいかというのは、この政治の世界の中にいて痛感しています。

小田理恵子 マニフェスト大賞

マニフェスト大賞 「政策提言部門優秀賞」「審査委員会特別賞」を受賞

市民に対しても言うべきことははっきり言う

加藤:市民の人との関わりの中でも大変なこともあると思うんですが、いかがですか。
小田氏:いろいろ言ってくる人はいますね。例えば、会合などに行くと、「うちは1人、2人、3人、4人、合計4票あるよ」と暗に意に沿えと言ってくる人もいます。ただ、全員にいい顔していても、うまくいかないと思って、言うべきことがあれば結構反論しちゃいます。
加藤:そうしないと変わらないですよね。
小田氏:ママさんたちにも「保育料が高い」とか言われますけど、「いや、実は公費がもっとかかっているから」って、保育の事情などをお話したりします。言えばわかってもらえると思って、納得はしなくても、「そういうもんなんだな」っていう理解はしてもらえます。

『先生』として踏ん反り返らないように

小田氏:議員になりたての頃は本当に弱々しくて、何かものを言うのもちょっとドキドキしながらだったんですけれど、場数を踏んでいく中で、面の皮がどんどんどんどん厚くなっていくんです(笑)。議会にも、行政にも、市民にも鍛えられてきましたね。
 ただ、感覚まで濁ってきて、「『先生』として踏ん反り返らないように」とは思っていますが、それでも6年前の私といまの私はだいぶ違うのだろうと思っていて、いつも自分の感覚が変わっていくことが怖いなと思っています。
加藤:どんなタイミングで、ご自身の変化に気づくんでしょうか。
小田氏:ここが怖いところで、自分ではわからないんです。私の場合は、主人が、「お前だいぶ偉そうになってきたな」って言ってくれる(笑)。そういうきちんと言ってくれる人を周りから排除しないっていうのも、大事だと思っています。
 職員の中にも私には結構きついこと言ってくれる人もいまして、それは本当にありがたいことだと真摯に受け止めています。また、地元の方々が「小田先生」ではなく「オダちゃん」とか「りえちゃん」などと親しみを込めて呼んでくださっているうちは、まだギリギリ大丈夫だろうと思っています。
加藤:やっぱり立場上、周囲からの指摘や批判を避けるようになることもあると思います。そんな中で、職員さんや周りの方が率直に本音を言ってくれることと、小田さんがその意見を真摯に受け止める。とても良い関係ですね。
小田理恵子 川崎フロンターレ

自分の体験をいつか住民に伝えて興味を持ってもらいたい

加藤:今後、人生の中で成し遂げたいことはありますか。
小田氏:私が体験したことを伝えたいなとは思っています。政治の世界にいると、中の人では話せないことって結構あるんです(笑)。国の大きな政治の流れ、国会議員さんのこと、そして、地方の中であったことなど、私がこの何年かで見聞きしてきたことを、どこかのタイミングで、誰かを傷つけない形で出せるといいなと思っています。
加藤:それって特定の人から見たらネガティブな話になるってことですよね。書き方も難しいですね。
小田氏:とても表現は難しいですが、とにかく住民に政治に興味を持ってもらいたいと思っていますので。最終的には、『住民自治』が日本を救うための方策と信じていまして、とにかく住民の方が自分たちで行政の在り方を考えて欲しい。そのための1つの判断材料として使っていただけるようなものになればいいなと思っています。

改革したい自治体募集!

加藤:最後の質問ですが、自治体職員の方にメッセージをいただくことはできますか。
小田氏:どこの自治体でもいいので、業務プロセス改革の仕事を手伝わせて欲しいですよね。
加藤:以前に、職員として自治体で働きたいとおっしゃっていらっしゃいましたよね。
小田氏:はい。やりたくてしょうがないですね。民間時代はもともと現場の仕事をやっていて、「現場って本当に面白い」と感じていました。決裁プロセスを簡素化する中で仕事のやり方を変えると、意思決定がもっとクリアになって、行政の効率は上がるはずなんです。遠いところは交通費だけは欲しいんですけど(笑)、やらせてくれるところあったら本当にタダでも良いですし、議員の立場とは関係なく仕事しますので、本気で大募集中です!
加藤:面白いですね。議員さんが職員になって働くことってあまりないですよね。
小田氏:いえ、実は結構いますよ。ある地方に視察で行った時に、若い職員の男性が「前に議員をやっていた」って、その頃の名刺持っていたりしました。
加藤:そうなんですか。そういう方がいて、議会と自治体両方の立場から物事が見えているということは強みになりますね。
小田氏:はい。だから、肩書にこだわらないようなタイプの人は、行政の中でも、どの立ち位置にいても働けると思うんです。
加藤:そもそも、小田さんにとって政治家になるということは、『手段』であって『目的』ではないですもんね。「自分がこうしたらもっと良くなるのに」っていう方向性に向かって、いまは議員としての立場で活動しているけれども、職員の方と一緒に何かを良くできるのであれば、立場を気にする必要はありませんよね。
小田氏:はい。そう思っています。
加藤:質問は以上となります。今日はお忙しい中、お時間をいただきありがとうございました。
小田氏:こちらこそ、ありがとうございました。
小田理恵子漫画6
 

編集後記

 東京都議会における百条委員会の話などもあり、地方議員への注目が集まっている。私は小田氏のお話を傾聴しながら、地方議員の在り方に関して、しっかりとした議論がなされるべきという心持を強くした。
 昨今、地方議会の在り方については、比較的辛辣な意見もある。それに加えて、今回の東京都の百条委員会では、議会は住民のための『是々非々』ではなく、それぞれの組織の意図を汲んだ政争の具として、もしくは、支持者へ向けた単なるアピールでしかないような使われ方をすることが多々あったと思う。豊洲や百条委員会の件によって地方議会に注目が集まることにはなった。しかし、結果的には全国の地方議会、地方議員のイメージまでをも毀損することにつながった気さえするのだが、これは誤りだろうか。
 そんな中、まさに小田氏は『是々非々』で行政と関わるべきだと主張している。小田氏がこのような考えを持つことのできる背景には、「議員になることが目的ではなく、『世の中を良くする手段としての議員』だと捉えていること」があるのだと思う。この考え自体が小田氏の強みといえるのではないか。
 しかしながら、『是々非々』で政策的な話をしたとしても、それが票につながらないという状態では、議員としても『是々非々で議論をしていこう』と動き出すことは難しい。だからこそ、住民も考え方を変えていく必要があるように思う。
 ただ、これには時間がかかるだろう。どうにかして、小田氏のような建設的な地方議員の方を少しでも増やすことはできないものだろうか。そう考えてみるのだが、悲しいかな、先行きは暗い。
 2015年の統一地方選挙において、議員の2割強は無投票で選出されている。また、一説によると、2019年の統一地方選挙では、地方の高齢過疎化などの要因によって、4割程度まで無投票選挙が増える可能性も指摘されている。つまり、今後、圧倒的に立候補者が足りない状態に向かって行く。地方自治体と共に、地方議会の権限と役割が大きくなった昨今では、これは非常に危機的な状態ではないだろうか。
 この課題に対して、いくつか対応策があると思うのだが、私は「国が『立候補休職制度※1』や『議員休職制度※2』の導入を企業に義務付ける」ことが大きな力になるのではないかと思う。これを、早急に検討してはどうだろうか。当然ながら、これは企業側から見れば諸手を挙げて喜べることではないだろう。
 だからこそ、いままさに『働き方改革』を行っている政府には、官民の人材流動性を高めるということも見据えて、風穴を開けるべくチャレンジをお願いできないかと思う。地方自治体には民間人が増えてきている。しかし、いまの日本全体における人員配置を考えると、議会の方が優先的に『民間からの人材』を確保すべき事態ではないかと思うのである。
※1 立候補やその準備期間において休職が可能
※2 議員として働く間は企業を休職し、以降の選挙で負けた場合は元の会社に復職可能(年限などは会社の規定による)

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