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野中英樹3-1

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【菊池市 野中英樹氏:第4話】話題性を求めるなら 大手代理店に委託すればいい

野中氏にとっての行政広報の役割とは

加藤:ここからは広報のお仕事についてお聞きします。まず、野中さんにとって行政広報の役割はどういうものでしょうか。
野中氏:4つあります。1つは市民をはじめとしたステークホルダーと行政との信頼関係を築く役割。この信頼関係がまちづくりの基盤になります。行政だけで解決できる地域課題なんてほんのわずかです。多様な方々に協力してもらうためには、信頼や共感が必要です。以前の一般的な自治体広報は、広報誌に行政情報を掲載するだけでした。これでは市民との距離は遠いままです。このため、行政情報を市民や関係団体の活動とともに発信することで距離を近づけ合意形成を図っています。
 2つ目は、まちのファンづくりと仲間づくり。市民にまちの課題や魅力を知ってもらい、関心を持ってもらい、行動してもらう。それによって地域愛やシビックプライドを醸成する。それがまちの魅力を増幅させ、市外の人を惹きつけ、交流人口と移住定住人口の増加につながる。だから、最初に人口を増やそうとするのではなく、まちのファンを増やし、いっしょに魅力を発信したり、作ってくれたりする仲間を増やしたいと思っています。
 3つ目は、地域で頑張っている人や団体を応援する役割。新聞には取り上げられないような目立たない取り組みでも、まちづくりに貢献している人や団体はたくさんいます。そうした人たちにスポットを当てて地域の魅力として発信しつつ、モチベーションの維持と向上を図ります。
 4つ目は、他部署の仕事に光を与える役割。それは報道機関へのリリースだったり、広報誌で業務の成果を紹介することだったり。広報は情報発信のプロであるべきなので、他部署と情報を共有しながら、必要だと思えば広報から企画を提案し、魅力ある情報に変えて発信する。そのためには他部署の信頼を勝ち取って、縦割りをなくしていくことも重要だと思います。
 この4つは全て密接につながっていて、行政施策を進めていくうえでも大切な要素になっています。それだけ、広報は重要な役割を担っていると言えます。

野中英樹 登壇

さまざまな機会で登壇されている野中氏

話題性を求めるなら 大手代理店に委託すればいい

加藤:大きなコストをかけてPR動画をつくる自治体もありますよね、そういう活動についてはどう思っていますか?
野中氏:実は周りから「面白い動画を作れ」と言われことがありました。でも私は「菊池市の広報のスタンスじゃない」と答えました。「話題性だけを求めるなら大手代理店に委託すればいい。広報ではしません」とか、強がってみたりして(笑)。でも、本当はちょっとだけうらやましいと思ったことはあります(笑)。
 話題性を狙った動画は、拡散しやすく、一過性の知名度アップにはなりますが、本来の地域おこしにはつながっていないケースが多いと思いますね。まちの本質的な良さを把握できていなかったり、ステークホルダーを巻き込めていなかったりするから、予算がつかなくなったら終わりってことになって、活性化につながっていかないのだと思います。
 場合によっては意図しないまちのイメージが定着するおそれもあります。大切なことは、ローカルな活動をコンスタントに発信し続けること。地域の魅力を知っている人たちの手で作り上げるものこそ、共感も呼び、本来のまちのイメージ定着につながると思います。

究極のローカリストになる

加藤:これからの自治体の広報に求められることは何だと思いますか?
野中氏:究極のローカリストになること。地域を知り、地域とつながり、地域に貢献する姿勢を持ち続けることが最も必要だと感じます。あとは、専門性です。
加藤:それは、なぜですか?
野中氏:限られたリソースで情報を効果的に発信するためには、ある程度の専門的知識が必要です。シティセールスとなれば、ブランディングやマーケティングのノウハウも求められるでしょう。近年は専門官を雇用したり外部委託したりする自治体も増えています。その場合でも安直に丸投げするのではなく、ローカリストならではの人脈と知識を生かし、基本的な方向について意見できるような専門的知識を身に着けておくことは大事だと考えます。

広報の力はすごい

加藤:野中さんが熱意を持って、広報を勉強するきっかけは何だったのでしょうか。
野中氏:きっかけは広報担当になったばかりのときにさかのぼります。実は、初めて作った広報誌の表紙写真を見たあるおじいさんが役所にやってきて、「これを撮ったのはお前か」と言われたんです。
 びっくりして、「そうです」と返したら、「こんな写真はプロでも撮れない」って言われました。わざわざそれを言うためだけに役所まで来てくれたんです。
加藤:ちゃんと見ているということですよね。
野中氏:はい。正直、その瞬間は「怒られなくてよかったな」くらいだったんですけど(笑)、後々考えたら「生半可な気持ちじゃできんな」と思いました。写真一枚で人の心を動かして、行動にまで移せるなんて、「広報の力はすごい」と思えて、本腰を入れるきっかけになりました。

菊池広報2011年5月号表紙

初めて撮った広報誌の写真

他の自治体や民間の広報が何をやっているのか勉強した

加藤:本腰を入れるようになり、具体的に何をされたのでしょうか。
野中氏:まず、情報発信のあり方を見直そうと思い、民間の広報のノウハウを学びました。それまでの広報では、基本的にはただ情報を垂れ流すだけでした。全く役所の外を向けていなかった。広報は市民との接点だと意識して、菊池市の魅力も発信していくことにしました。
 そのタイミングで、そもそもの情報発信のコンセプトについても深堀りして考え、「癒しの里菊池」というブランドメッセージを打ち出し、情報のイメージを統一して、ホームページや広報誌をリニューアルし、フェイスブックや動画も活用。これまで市の情報が届いていなかった層にも興味を持ってもらえるようにしようと考えました。
加藤:どうやって、民間の広報のノウハウを学んだのでしょうか?
野中氏:民間事業所向けのセミナーに参加したり専門書を読んだりしましたが、一番影響を受けたのは地元企業の会長の話でした。脱サラして始めた養鶏業を一代で大繁盛店にした方です。一つの強みを磨き続けてブランド化し、トレンドや消費者ニーズも把握、地元生産者も巻き込んでオンリーワンの魅力を作り出しています。
 ノウハウはもちろんですが、とにかく自社製品や農産物に対する思いとこだわりが半端じゃない。自治体に置き換えれば、郷土愛や地域資源になるかと思います。こうした学びを基に、まずは自分自身がまちのことを知り、ストロングポイントを見出し、それを磨いて効率的に発信していく仕組みを作ろうと考えました。でも、こうした考え方は広報先進地と呼ばれる自治体の担当者との情報や意見交換で確立していったように思います。
加藤:他の自治体の広報担当者とは交流があるんですか。
野中氏:広報のノウハウやスキルや考え方って、ある程度全国共通ですから、広報協会や県主催の研修会で事例発表を聞く機会も多くあります。個人のSNSでまちの情報を発信している職員の割合も多く、つながりやすいので担当者のネットワークは他の分野に比べて格段に強いと思います。モチベーションを保つには、頑張っている同業者の姿が励みになりますし。予算がつかないとか、仕事が多いとか、愚痴りながらたまに真面目な話をします(笑)。
野中英樹6-1
 

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※本インタビューは全7話です。facebookとTwitterで更新情報を受け取れます。

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