インタビュー

【奈良市長 仲川げん氏:第1話】「市役所で談合が行われている」とテレビで放送

仲川げん TOP1話目
【仲川げん氏の経歴】
1976年生まれ。立命館大学経済学部卒業。国際石油開発帝石(株)及び、奈良NPOセンターでの勤務を経て、2009年7月、当時全国で2番目に若い33歳で奈良市長に初当選。現在2期目。「日本を立て直す100人」(AERA)に選出。中核市市長会前会長。

-仲川市長以上に役所のトップとして、不正に向き合った方はいないのではないか。2009年に奈良市長就任以降、大胆に市の不正に向き合い、コストカットを進める一方で、緻密に不正が起きない仕組みも構築している。
 一筋縄ではいかない不正への具体的な取り組みや、行政の本来あるべき姿、そして、仲川市長の考える未来への向き合い方をお聞きした。

市長就任から1期4年で85億のコスト削減を進めた

加藤:早速ですが、2009年に市長に就任されてから、約85億円のコストカットというところを進めていらっしゃいます。特に、大型公共工事の入札制度を見直すことで約30億円近い削減をされていますが、それについてはどう進められたのでしょうか。

仲川市長:基本的に行政が行う入札制度というのは、予定価格という標準的な価格がまずあって、それに対して企業が「いくらでこの工事を請け負います」と入札をして競うわけです。
 ただ、その時に、建築工事の規模によって、最低制限価格という下限が示されるんですね。つまり、それ以下の金額で請負うことができる業者が存在しても、値段が下げられない仕組みになっています。まずそこに疑問を持ちました。

建設工事の最低制限価格を撤廃

仲川市長:そこで、この最低制限価格を撤廃できないかと考えたわけです。当時、市では市立病院の建設事業を控えていましたが、従来の規定では最低制限価格が88%。つまり100億円の事業なら88億円以下では発注できない訳です。
 このパーセンテージは市の制度で最も高い設定です。当時は東日本大震災の前で、今ほど人件費や資材の高騰が叫ばれていなかったこともあり、まずは試行的に撤廃しようと判断しました。

 もちろん、実績を得るために採算を度外視して叩き売りをするダンピングや、粗悪な工事業者を防ぐためにどうすれば良いかを、入札制度の専門家とも相当議論した上での結論です。

仲川げん1-3

仲川市長:「なぜこの事業を選んだか」と言えば、この工事はまず予定価格が約90億円と大きく、スーパーゼネコンと呼ばれる、超大手企業が入ってくる規模。そういった企業にとっては、採算を度外視してまで、この程度の事業で実績作りをするメリットはあまりない。
 品質についても、仮に「大手企業が手抜き工事をした」ということになれば、マイナスの影響のほうが大きい話になるので、そういうリスクも比較的低いだろうと考えました。

 最終的には、価格だけでなく工事品質も問う「総合評価方式」も併せて導入しましたので、コストと品質の両方が最適化できたわけです。結果は落札率63%の約57億円で落札。これでも応札4社の中では2番目に高い額でした。必要な品質確保は果たしながらも、自由競争を導入することによって、貴重な市民の税金を大幅に節減することができた訳です。もちろん、この工事でその後、施工不良による不具合などは発生していません。

「市役所で談合が行われている」とテレビで放送された

仲川市長:そもそもこの入札制度改革には前段階があります。前市長時代の2006年に市の職員が、解放同盟幹部の立場を利用し、自身が実質的に経営する建設会社に仕事を発注するよう市の担当部署に圧力をかけるという事件が起きます。
 この職員は5年10か月で8日しか勤務実態がなかったことも判明し、当時全国から批判が殺到しました。(のちに職務強要罪で逮捕。懲戒免職)そんな中、問題の職員を追いかけていたカメラがある瞬間を報じます。

 実はこの番組の中で、市役所の入札控室で「くじ引き談合」をしている様子が生々しく報じられたんです。これにより「くじ引き業者」3名が逮捕されるとともに、問題職員の妻も一連の談合に関わっていたとして、競売入札妨害罪で逮捕されました。

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最高裁「談合が推認され、これに反する証拠はない」

仲川市長:その後、オンブズマンから住民監査請求が出され、それが損害賠償請求へと発展します。ここまでが前市長時代の話。当時、市としては「談合がなかった」という立場でしたが、最終的に最高裁まで行き「談合が推認され、これに反する証拠はない」と結論が出たわけです。

 その時が就任からちょうど一か月。正直、前後の脈絡もわからない状態で、いきなり「最高裁の決定が出ました」と聞かされたので、最初はなんの話か全く分かりませんでした。問題はそのあとです。最高裁までいって、「談合がほぼ間違いない」と言われている以上、市として放置するということは許されませんので、すぐさま指名停止措置をしました。これが後々大問題になります。

談合事件をきっかけに入札制度を見直し

仲川市長:実は当時、市内には約600社の指名業者(市から市の事業に対して入札などが認められた業者)がいましたが、指名停止を受けたのがおよそ3分の1に相当する201社。しかも2年間の指名停止という市政始まって以来の大規模な処分となりました。当然、ものすごい反発があり、市長室に押しかけてくる人もいれば、市の行事でも業者が詰め寄ってくるということもありました。

 こちらとしては最高裁で結果が出たものを、基準に照らし合わせて処分をしただけ、という立場ではありました。しかし、やはり2年間もの指名停止は死活問題であると同時に、今までの慣習が一気に覆されたことから反発の声は非常に大きかったです。

 最終的には当該業者にコンプライアンス研修への参加や、法令順守の誓約書を提出させることを条件に指名停止期間を1年に軽減しましたが、この間に第三者による「入札制度等改革検討委員会」を設け、市の入札制度の問題点を洗い出したことが後に生きることになりました。

※本インタビューは全9話です

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