インタビュー

【和光市長 松本武洋氏:第5話】市民のために失敗して、自分の首が飛ぶのは構わない

和光市松本市長5

自治体が無駄づかいをしているというのは10年以上前の話

加藤:費用面でも、コンサル料に比べて抑えられることはあるのでしょうか?

松本市長:いえ、今自治体はお金がないので、もともと、そこまで大きな額を会計コンサルに払っていないと思います。昔はそれこそ、一本何百万、何千万という依頼をしていた場合もあったと思うんですけど、今は、どの自治体も本当にお金がないんです。

 いまだに自治体がものすごく無駄づかいをしていると言うジャーナリストもいるんですけど、一般的な基礎自治体においては、それは一昔前の話しです。10年前と今では本当に違います。

山本享兵氏:三位一体の改革以前と以降では別世界ですよね。ここまで切り詰めるのかと思うことさえ沢山あります。

松本市長:社会が成長しないと行政は縮小するしかないので、そういう苦しみが全国で起きています。学者には「人口減少で良い」とか、「経済が縮小していい」と簡単に言う人がいるんですけど「その意味を本当に分かっていますか?」と問いたいですね。

 可能なら経済は成長させるべきだと思いますし、これまた可能なら人口も減らすべきではないと思いますね。少なくとも和光市の人たちには、そういう思いをさせたくないです。

「財政を引き締める」から次のステージへ

加藤:山本さんから見て市長はどういう方ですか?

山本享兵氏:まずは、どんなことでも知っている方ですね。それは例えば都市計画の知識のような専門的な知識もそうですし、和光市のことはありとあらゆることを何でも知っていますよね。

 それと、財政を大きなテーマとして掲げている政治家であるにも関わらず、その一方で歯を食いしばって未来への投資をするという姿勢です。財政に関心があるということを表に出される政治家の多くは、引き締め一本槍でいく人が多くて、「無駄を削ればなんとかなる」「補助金は全部やめればいい」「職員を減らせばいい」となりがちです。

 しかし、市長は必要であれば職員も増やしますし、地域の方のつながりや活動の勢いを作るために必要な投資は行っています。それは『持続可能な財政運営』ということを真剣に考え抜いたうえで、財政を引き締めるだけではそれは実現されないという中で行き着いた、さらに進んだステージなのだと思います。私も市長の意思決定に触れる中で、幾度となく「自分の視野がすごく狭いんだな」と感じさせられる場面がありますね。

ニッポン全国鍋グランプリ

和光市が共催するニッポン全国鍋グランプリ 2017年は約15万人が来場

加藤:企業再生なんかもそうですが、最初にコストを圧縮するということは、比較的目に見えてやりやすいところですが、そこが落ち着いて「次は売上を増やしていこう!」というのは難しいですよね。ましてや、地方自治体であれば人の幸福度を高めようという目的になるので、本当に難しいチャレンジだと感じます。

市民のために失敗して、自分の首が飛ぶのは構わない

山本享兵氏:そうなんですよ。盾だけではダメで、矛も必要なんですね。狙いを絞った領域に矛を出していくことが本当に大事なんですが、とても難しいですし、上手くいかない場合の政治家としてのリスクもあるかと思いますし。

松本市長:まあ、自分を守るために市長になったわけではないですからね(笑)。市民のために全力で攻めたにもかかわらず成果が出ない場合、責任を取って自分の首が飛ぶのは構わないですけど(笑)。

加藤:守りに入らず、勇気を持ってトライしたことに対する評価も、織り交ぜて評価して欲しいですよね。失敗のないチャレンジは有り得ないので。

それとなく人のつながりを生んでいく

山本享兵氏:あと、松本市長は市民協働の名手だと思うんですね。市民協働系の取り組みは全国の自治体でいろいろありますが、松本市長の場合はそれほどお金をかけずに、それとなく人のつながりを生んでいく取り組みが多くて、実際にその効果が出ていますよね。

 しかも、それを市役所が前面に出て行き過ぎないで、市民の主体性を引き出すことにより生み出す。これは、他の多くの自治体を見渡してもありそうでないと思います。

和光市松本市長 市民

地域の人と人同士のつながりを大事にする市長

松本市長:もうちょっと支援できればと思う瞬間はものすごくあるので、心苦しくはありますね。地域の皆さんが歯を食いしばって活動してもらう中、なんとか回っていますが、本当はもっとサポートしたいですよね。

加藤:その想いが地域の方に伝わるからこそかもしれないですね。

和光市松本市長 市民2

大晦日に、若者と写真を取る松本市長

―山本氏はここで退席

民間時代の投資とリターンの考え方が生きている

加藤:過去にベンチャーキャピタルや雑誌社のお仕事をされていました。どのようなことが現在に生きていると思われますか?

松本市長:ベンチャーキャピタルには、1年しかいなかったので、何かスキルを習得できたというのは言いづらいですが、投資とリターンという考え方を叩き込まれたと思います。私は会社の資本政策をサポートする部署にいて、先輩たちは、「将来的にどういう段階で増資をして、どういう段階で株式公開をしていくか」というプランニングをしていたんです。

例えば市役所にでの仕事に置き換えると、土地区画整理事業などを進めるにあたり、市役所として数十億円もの持ち出しがあるんですね。

 これは、どのくらいの期間で回収できるかというのを、かなり綿密なシミュレーションをやって、上手くいくだろうと踏んで進めています。まさに投資という感覚と同じだと思います。

加藤:なるほど。

松本市長:その後に出版社に転職するんですが、その時も書籍単位で担当を持っていたので、仕事は一本一本それぞれの粗利が分かりました。もちろん、在籍中に稼いだ粗利もわかっていますよ。

 この出版社時代に私が中心的に作ったのが会計の本とか、財政の本とか、経済の本だったので、その時に公認会計士さんとか、民間企業の財務部門の方との接点の中で学べたり、経営コンサルの方からいろいろな話を聞かせていただいたというのが、今も生きていると思いますね。

※本インタビューは全6話です

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