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【生駒市長 小紫雅史氏:第2話】ミドルが変わらないと 優秀な若手は辞める

組織の同質性を乱しにいくことが必要

加藤:まず初めに、新卒採用をテコ入れしました。中途採用はどうされていますか?
小紫市長:中途採用は必要だとずっと思ってきましたが、ようやく昨年8年ぶりに実施できました。
 市町村の職員は、とても同質性が高いんです。国から言われたことや、法令に基づいてきっちり作業をする上では、それでいいかもしれない。ただし、地方創生という時代の中で、市民の中に飛びこんで課題や協力者を見つけながら、それぞれの市町村が独自の事業を展開していく時には、あえて、その「同質性を乱しにいくこと」が必要だと思っていました。
 新卒採用も年齢の上限を30歳まで引き上げたり、大手の民間企業で働いていたような人も中途で採用しています。

もっとはっちゃけて 自由にやっていい

小紫市長:実は2日前に知ったんですけど、うちの消防職員に一人、元吉本興業のお笑い芸人の人がいることを知ったので、生駒市で全国の芸人公務員のサミットをやろうっていう話で、半分冗談、半分本気で盛り上がったんです(笑)。
 尼崎市役所の江上さんや桂山さんといった元お笑い芸人さんだった人や、holg.jpにも出られていた鹿屋市役所の半田さんのような人に話をしてもらって、どこに活躍できる要素があるのか教えてもらいたいんです。
 価値観や活動内容などを伝えてもらえる機会があれば、きっと採用した優秀な職員が、もっとはっちゃけて、自由なアイデアで働けるようになると思うんです。
加藤:それこそ、半田さんのような方は、役所ではマイノリティとなるバックグラウンドを持つからこそ、新しい発想で仕事ができますよね。お笑い芸人をやっていた人は、コミュニケーション能力が高い方が多いと思うので、市民との距離を近づけることができる。市民協働をしていく必要のある全国の自治体では、これから大きな力になると思います。
小紫市長:本当に重要なのは人ですね。既存の枠組みにとらわれずに、地域と向き合い、物事を動かしていける人です。

市長だけが改革派であっても限界がある

小紫市長:「改革派市長」という言葉がありますけど、市長だけが改革派であっても、市長のスケール以上の町には絶対にならないはずですよね。
 私が一番望んでいることは、職員が成長し変化することなんです。職員が、まちにどんどん飛び込んでいく。それを部長課長などのミドル層が応援し、時にはミドルが「自分も行こう」とまちに出ていく。そうやって常に現場を肌で感じながら、政策を立案する。
 「改革派市長」一人だけでは実行できない新しい取組が次から次へとおこる。その時に、『改革派市長が引っ張る自治体』というところから、次のステージへ行けると思うんです。

生駒市役所 新入社員

新卒及び中途採用で入庁された方<平成29年4月>

市長はいくら頑張っても一人しかいない

小紫市長:お役所仕事を抜け出せず、補助金頼みだったり、少子高齢化を受けてあきらめモードになったりしてる自治体を『1.0』とすれば、そのアンチテーゼとして改革派の元気な市長がトップダウンで改革する自治体が『2.0』です。「市民はお客様」であり、民間企業並みの「スピード感」「接遇向上」「市民ニーズにすべて応えます!」という感じです。これは確かに必要なことなんです。
 ただ、『2.0』だとどうしてもトップダウンになってしまいやすく、職員は言われたことをこなすことで精いっぱい。それでは、自分で考える・動くことが全然できずに、市民とともに汗をかこうという発想や行動に至らないわけです。
 そうではなく、トップダウンと同じくらいボトムアップの動きが出て来て、市長にアドバイスしたり、より良い提案をしたり、市長の知らない面白い市民を探し出して連携するような動きが出て来る。それをミドルが温かく見守り、応援する。そうやって、トップダウンとボトムアップ、ミドルによるつなぎのバランスが良くなり、市民ニーズに応えるだけでなく、市民と笑顔で連携できるようになったら、理想の『自治体3.0』の状態だと思います。
 市民と職員が何かを一緒にやろうと盛り上がって勝手に動く。私はそれを後から知って、「なんか寂しいな」くらいの感じのほうが絶対良いんです(笑)。
 市長はいくら頑張っても一人しかいないので、2つの耳と2つの目しか持っていない。でも、生駒市の職員800人のうち、まず100人ぐらいが動き出したら、見ることや聞くことのできる現場の声や状況は一気に広がります。つながることのできる市民も増え、明らかに『2.0』とは違うまちになると思う。
 今は、そういう組織になるための、生みの苦しみを感じています。もう少しで一皮むけそうなんですよ、生駒市は。日本で初めての『自治体3.0宣言』をしたいですね。

部長から係長クラスが 組織を変えるキーポイント

加藤:その動きを作り出すうえで難しい点はありますか?
小紫市長:やはり、ミドル層、管理職が苦労してくれていると思います。彼らは、今までずっと「市町村は、国や法令に基づく業務をミスなくしっかりとやらなければいけない」という時代を過ごしてきています。生駒市は多様な分野で県内トップクラスの評価をいただくくらい職員が頑張ってきた分、プライドを持っている。それが、最近「地方創生」のために自分でしっかり考えて行動せよ、というようなことをいわれるようになってきた。ある意味、転職したくらいのインパクトですよ。
 「決められたことを大過なく執行せよ」という減点主義だったのが、いきなり「自分たちで課題を洗い出して対応策を考え、実施せよ」という加点主義になったわけですから。しかし、そう簡単に発想・行動の転換はできないですよね。
 そんな中で、新たに採用した若手職員が「新しいことを創ろう」「まちに出よう」なんて言うので、どのように育成・指導していくか、管理職はとても悩んでいると思います。これをどうバックアップしていくかが今一番の課題です。結局、組織を変えるときのキーポイントは、ミドル層のこれからの頑張りです。私も管理職に対してメッセージを出したり、思いを語ってもらえるような場づくりを強化しています。
小紫雅史市長2-3
小紫市長:環境省の時はトップが小池百合子さんで、若手が何か提案すると「すごく良いわねー」と言ってもらえて、盛り上がっていました。
 ただ、その後に、小池さんが環境省のミドルに対し、若手の提案の実現を指示すると、上手に骨抜きにされたり、一部だけ実現した後は流されたり。もちろん、納得して応援してくれる人もいましたけど、ミドル層は一筋縄ではいかないと同時に、ミドルを巻き込まなければ、トップの力があっても組織はそうそう変わらないと学びました。どこの自治体もこういう構図が典型的なパターンであると思います。

ミドルが変わらないと優秀な若手は辞める

小紫市長:若い職員は、なかなか簡単にミドルの壁を突破できないところもあるけど、元気な職員は他の自治体の友人や職種ごとの集まりに参加して、横のつながりの中でエネルギーを充電していたりしますね。そして、また日々の業務に戻って、また叩かれての繰り返し(笑)。
 だから、私としては、ミドルにもしっかりと『自治体3.0』の話を伝え、納得してもらいながら組織を変えていきたいと思っています。逆に言えば、そうしないと、うちが採用している職員はみんな優秀なので、辞めちゃう可能性があるんです。
 彼らは、生駒市以外の自治体、政令市や都道府県、民間企業の内定を辞退してまで希望に燃えて生駒市に来てくれています。生駒市が自分のやりがいや成長、楽しい職場でなければ、いつでも転職できる力がありますから、そういう意味でのプレッシャーは常に感じています。

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