インタビュー

【浦安市 小泉和久氏:第3話】参考にした『ボルチモア市役所の会議』

2009年に政策支援GISの取り組みを始める

加藤:2009年頃に、政策支援をするためのGISを構築する取り組みをされています。これについて教えていただいてもいいですか?

小泉氏:2000年に共用空間DBを作って10年位経ち、庁内でのGISの利活用や、防災マップや水害ハザードマップ、バスマップ等の市民向けの地図もどんどん作ってくれるような文化になりました。

 でも、元々はGIS上でいろいろな情報を載せ、政策支援や事務事業評価に使える、分析や評価をしていきたいと思っていたので、もう一歩先へ進みたいと考えました。

浦安市の事務事業評価表を全て見て 政策支援GISの意義を感じた

小泉氏:その時は行政評価ブームで、行政評価とか事務事業評価ってどこの市もさかんにやっていたと思います。本市も当時709事業に対し、事務事業評価をやっていたんです。僕は各事業で、どういう情報を扱っているか把握するために、事務事業評価表を全部見たんですよ。709事業分(笑)。

 そこでわかったのは、役所の管理・扱っている情報のうち約9割は、何らかの住所、所在地という「位置情報」に関わっていること。あてはまらない事業は会計監査とか、伝票処理くらいしかない。それを見たら、「もっともっと庁内の中のデータをGISに落としていろいろやった方が良い」、「分析もしていった方が良い」と思うようになりました。

アメリカ 『ボルチモア市役所』の視察

加藤:何か参考にされた事例はあったのでしょうか。

小泉氏:当時、日本ではそういった政策支援GISシステムというのはあまり導入しているところがなくて、海外のものを調べたら、アメリカのボルチモア市役所の『シティスタット会議』という場で、『GISアナリスト』という分析官がいることがわかり、そこへ勉強しに行きました。
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ボルチモア市役所のシティスタット会議とは

加藤:その『シティスタット会議』ではどういうことが行われているのでしょうか。

小泉氏:『シティスタット会議』では、ボルチモア市の部局の責任者が2週に1回、定例報告発表をするのですが、その場に『シティスタット』がいます。『シティスタット』というのは、市長直轄のスタッフで組成されたチームのことで、『シティスタット会議』の時には、財務や人事、労務、法務、ITなどの局長も、シティスタット側に立ちます。
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小泉氏:この『シティスタット』の中に『GISアナリスト』もいて、コールセンターに蓄積されたデータ、各部局から提出される定例事業報告書、現地調査の結果などをもとに、GISやエクセルなどを駆使して事業結果などを分析します。そうやって洗い出された課題や問題点を部局にぶつけて戦わせるのです。

 発表者が追及されて、仮に「お金のせいで、できていません」と言った場合、財政局長が「いえ、このように適正に予算は配置しているので、本当の原因は違う」と言ったりします。発表者が「人が足らないからだ」と言うものなら、人事局長が「いや、適正に人は配置している。問題は違うのではないか」と、関係者を一堂に集めて、問題や課題の本質を徹底的に探ります。ディベート好きのアメリカらしいですよね。

発表者が泣くまで責められていた厳しい会議

加藤:視察の時はどのような話があったのでしょうか。

小泉氏:私が行った時には不法投棄の件数が増えているという話を追及していて、環境部の女性の部局長が泣くまで責められていました。「すごいな」と思ったのは、どんなに泣いても2週間後の次回シティスタット会議までに「この数字をこの位にします」という目標を宣誓しなければシティスタッド会議は終わらなかったことですね。

日本の会議では在り得ないことが起きていた

加藤:シビアですね。その不法投棄に関する具体的な問題は、どういうものだったのでしょうか。

小泉氏:「コールセンターのデータを見ると、ここのところ急激に不法投棄の苦情が増えている」と課題が顕在化していたんですね。そこで、シティスタッド側で現地を調査したり、コールセンターの情報をGISアナリストが地図に落としたところ、不法投棄の集中している地区が判明する。

 そして、会議の場で「そもそも環境部局さんは、どんなパトロールをしているの?」という質問が投げられて、環境部局も「こういう計画で、こう対応している」とやり合っている感じでした。

 これを2週間に1回やっていて、すごいなと思いますね。日本の会議では在り得ないことだと思いました。

加藤:アメリカではどこでも普通にやっていることなんですか?

小泉氏:「ボルチモアとニューヨークではやっている」と言っていました。アメリカでも特別らしいです。

俺(GIS分析官)だからできるけど、職員全員がやるのは無理だよ

加藤:GIS分析官とは、どんなお話をしたのですか?

小泉氏:分析官の彼に「浦安市でもGIS分析をやりたい」と率直に相談したのですが、「GISの訓練をしているGISアナリストの俺だからできるのであって、一般の職員の全員が、これをやるのは無理だよ」って言われてしまいました。

 「あれー、どうやって進めようかな」となったというのが、正直なところです(笑)。

※本インタビューは全6話です

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