インタビュー

【浦安市 小泉和久氏:第2話】庁内には 宝物のようなデータが眠っている

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地図の画面から住んでいる方の「氏名、生年月日、性別」を見ることができる

加藤:費用と別のメリットとして、データ活用という面ではどういうメリットがあるのでしょうか。

小泉氏:そうですね。庁内GISの地図上の家屋をクリックすると、そこにどういう方が住んでいるのか、そして、住んでいる方の「氏名、生年月日、性別」という基本4情報を見ることができます。GISと住民基本台帳のデータの一部が連携されているからです。これは、住居表示台帳の住居表示番号、いわゆる「住所」のデータを、共用空間DBに共有してもらったから、GISと住基データとの連携が可能となったのです。
 もろちん、アクセスを許可された職員だけであり、都度IDパスワードで認証し、操作ログも取っていますよ。

庁内では宝物のようなデータが眠っている

加藤:「この建物にどういう方が住んでいるか」というのがわかると、どんな仕事に役立つのでしょうか。

小泉氏:一番は、東日本大震災の時でした。あの時は、液状化被害で、道路、水道、下水道が大変な事態となりました。下水道の場合、そのお宅がどの本管から下水道を敷いているかによって、下水道の利用制限の度合いが異なることとなります。よって、「隣の家は使えても、うちは使えない」という声も上がりました。

 そこで、GIS上に本管の位置や利用制限を受ける家屋をポイントし、その家屋の住基データを集計し、影響を受ける世帯数や人数、生年月日から、高齢者数や子どもの数などをある程度正確に見込むことができました。この数字をもとに、便袋等の生活支援物資を効率的に配付することができました。

 また、当時の消防指令台システムに、住基データと連携したGISを導入したことによって、火事や救急の通報が入った時に、「その家屋に何人住んでいる」「高齢者がいる」「赤ちゃんがいる」という情報をあらかじめ把握でき、消防活動や救急活動に役立てることができました。

 情報を出した課にとってみれば、大した情報じゃないのかも知れないですが(笑)、実は、他の課から見ると、宝物のようなデータになることが結構あるのです。そういう積み重ねによって、「情報・データを出すと誰かが助かるのだなぁ」という気持ちが庁内に広がり、GISの活用事例が増えていきました。

導入検討委員会で共用すべきデータを3年間突き詰める

加藤:具体的に共用空間DBの整備を進めて行く上では、どういう動きをされていたんですか?

小泉氏:1997年に統合型GISという、各部署の情報を統合したGISの仕組みが、全国の自治体で議論されるようになりました。浦安市でも、各課が個別にどんどんGISを導入してしまうと「約2000万円×該当部署」とコストが際限なくなってしまうので、なんとかするためにGIS導入検討委員会を設置しました。

 地図の部品となるデータをもっている道路、都市計画、建築指導、固定資産税などの課、また地図をよく活用している防災、消防、交通などの課、そして、仕切り役の情報政策課の約10課の関係課のメンバーが集まって、「ウチはこういうのがあると嬉しいね」、「ウチはこんなのを持っている」というのを出し合いました。

 3年ぐらい、「共用できる、できない」「共用するとしたら、どのように共用するか」ということを突き詰めて、その結果、2000年に、共用空間DBを構築して、「ここにどんどんデータを入れて下さいね」という仕組みができました。

部署のムラ意識が情報提供の障壁となる

加藤:進める上で一番難しかったポイントはどこでしょうか。

小泉氏:それぞれの部署のムラ意識と言いますか(笑)、情報を出してもらうことが難しかったですね。自らの管理下から情報が離れるというのが不安なのと、全ての情報が正確とは限らないので、それはその課の情報だからこそ、行間を読んで使っている部分もあるのです。

100%正しいデータなんて なかなか存在しない

加藤:なるほど。持っている情報が100%正しいわけではないので、そのデータが自分の部署から離れて、独り歩きしてしまう。政策支援などに使われたら、ズレてしまうこともあるかもしれない。

小泉氏:そうなんです。100%正しいデータなんて、なかなか存在しないのですよ。生き物のように、常に変動しているデータって沢山あります。それはどこの課でも不安なんです。

加藤:自分の手の離れたところで、「このデータ間違っているじゃないか」みたいな文句を言われるリスクがありますよね。

小泉氏:はい。そこはかなり苦労したところですかね。「データを共有・共用化して、みんなの仕事が効率化される」という総論は賛成だと言ってくれるんですが、「お宅の課のこのデータが欲しいです」とお願いすると、突然、「ガラガラガラ・・・」とシャッターを閉められてしまう・・・(笑)。
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相手が個別に抱える不安をとり除けるように口説く

加藤:その状況でデータを出してもらうために、何をされたのでしょうか?

小泉氏:基本的なスタンスとしては、相手が抱える不安をとり除く感じで口説きにいきました。「法律上どうなんだ?」と言われた場合は、国の資料や専門家の書物などを参考に、法律的に問題ないことを伝え、口説いていきました。

 それと便益という観点で、「庁内はこんなに便利になりますよ」、「庁内もそうですけども、市民の人もすごくハッピーになるのですよ」と、将来のイメージを伝えながら口説いたりしました(笑)。

加藤:筋を通しながら、根気よく向き合っていかれたのですね。

市長ではなく 各課の課長に理解してもらう

加藤:誰に理解をしてもらえたら話が進んだのでしょうか?

小泉氏:先程話したように、総論はみんな賛成するので、市長というよりは、実際にデータを管理している課の課長を説得する感じですね。

 それと、本市が進める上で大きかったのは、情報政策課が、旗振り役・牽引役となると腹を括っていたことだと思います。固定資産税課が持っている情報を共有しようとしても、地方税法上、それ以外の用途として利用できない情報があったので、そこは私が在籍していた情報政策課が、所管替え・用途替えをして引き受けました。当時の情報政策課長が腹を括ってくれたおかけです。

少しずつお互い様の文化が醸成されていく

小泉氏:そうしていくうちに、自分の課が出したデータが、他の課の仕事に役に立ったという事例が出てきて、「じゃあ今度はあなたの課も出してよ」という流れになり、共用空間DBの情報量がだんだん増えていきました。

 だから、トップダウンというのは全然なかったんです。じわじわじわじわと、全庁に広がっていた感じです。トップダウンというのも、それも一つの方法かも知れませんが、長続きしない可能性もあると思います。

加藤:やらされたとしても、本質的な価値を理解していないので、後々、優先順位が低くなったりするんでしょうね。

※本インタビューは全6話です

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