インタビュー

【浦安市 小泉和久氏:第1話】地図データの共用化で7000万円以上のコストを削減

【小泉和久氏の経歴】
1971年生まれ。高校卒業後、民間企業に1年勤務した後、1990年に浦安市役所に入庁。財務部収税課、固定資産税課を経て、1999年に情報政策課へ異動、ICT、データ活用について学ぶ中で、地理空間情報システム(GIS)に出会い庁内で普及促進を図る。2012年に財務部市民税課へ異動、2014年に税制係長となる。
 プライベートでは、2012年に有志職員とともに自主研究グループ「チームURA-CIMA」を設立し、GISやオープンデータの研究に取り組み、2016年に市民活動団体に活動の場を拡大させた。GIS上級技術者の資格者として、また一般社団法人地理情報システム学会自治体分科会幹事として、全国自治体へのGIS普及拡大にも尽力している。

-浦安市役所の持つ情報と地図情報を組み合わせてコストカットを進め、分析業務の質の向上に貢献した小泉氏へのインタビュー。地理空間情報システム(GIS)を庁内に普及させていくまでの経緯、そして、浦安市における具体的な活用事例をお聞きした。
 日進月歩で進化するテクノロジーと自治体はどう向き合っていくべきなのか、そのヒントがここにある。

25年の市役所生活で 情報政策と税に関する担当のみ経験

加藤:現在の所属と普段の業務を教えていただけますか。

小泉氏:現在は、財務部市民税課の税制係長をしています。主な仕事としましては税制改正や市税条例の改正、あとは法人市民税や軽自動車税などの管理もしています。また、税制係は税3課のまとめ役という位置付けもありますので、税システムの全体管理や税業務の包括業務委託(BPO)に関する仕事もしています。

加藤:市役所では、今までどういうお仕事をされてきたのでしょうか。

小泉氏:実は僕は25年近く役所の仕事をやっていますが、税と情報政策の仕事しかやっていないんです(笑)。

加藤:面白いですね(笑)。ただ、長く同じ部署にいるからこそ、いろいろ進められたのかもしれません。

小泉氏:「これだけ課があるのに?」というところもありますが。余程引き取り手がなかったのでしょう(笑)。

どの部署が どんな情報・データを持っているのか わからない

加藤:情報政策課の仕事を進められる中で、かなり先進的な取組を進められたと伺っています。そもそも、自治体の持つ情報について、どういう課題があると思われていらっしゃったのですか。

小泉氏:自治体は、庁内にたくさんの情報・データを持っているのですが、いかんせん縦割りと言いますか、「どの部署が、どんな情報・データを持っているか、わからない」というところがあったので、庁内の情報の共有化をすべきだと感じました。

政策を考える時に 様々な課の情報を使いながら判断していくべき

小泉氏:実際にその課題を感じたのは、1999年に情報政策課に異動して、地理空間情報システム、GISに出会った時でした。地図は白地図だけでは意味がなくて、そこに情報・データが載らないと使えないのです。

 例えば「老人ホームを建てたい」となると、高齢者支援課には支援している高齢者の情報はあるけれど、これから高齢者になる人の情報がなかったり、その高齢者の方がどんな健康状態なのかというは、福祉の課が持っていたり、移動手段の一つであるバスに関する情報は別の課が持っていたりという状況になります。

 何かの政策を考える時に、我々は庁内の様々な課の情報を使いながら判断していくべきなのですけれど、そのさまざまな情報を可視化し、効率的に管理する道具として、「GISが使える!」と感じ、「地図データの情報共有を進めて行こう」という発想のきっかけとなりました。

部署の枠を取り払って 1つのDBに情報を入れる

加藤:その中で作られたものが、共用空間DBというものですね。これはどのようなものだったのでしょうか。

小泉氏:庁内では、地図の部品となるデータを法律上・制度上、整備しなければいけない課というのがあります。

 例えば、道路のデータは道路管理課というところが法令に基づいて、道路台帳というもを整備しています。都市計画図は、都市計画課が法令にもとづいて、整備をしています。

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小泉氏:このように各課が整備している地図の部品となる個々の情報を、部署の枠を取り払って一個の入れ物に入れて、みんなで使えるようにしましょうというのが、共用空間DBとなります。

地図データの共用化で7000万円以上のコストを削減

加藤:共用空間DBを整備された際に、コストメリットと便益があったのだと思いますが、コストとしてはどのくらい削減ができたのでしょうか。

小泉氏:共用空間DBにより、庁内のデータを共有・共用が可能となったことから、『都市計画図のデータ整備費用』と、『各部署の個別型GISの構築費』という2つの点で、コストカットができました。

 まず、都市計画図というものを5年に一回作っていて、このデータ整備費に、当時は約1500万円かけていましたが、共用空間DBを整備したことで、約350万円に削減されました。
 理由は、共用空間DBの中にある各課が整備したデータ、例えば市道、土地や家屋のデータを、都市計画図のデータ整備時に利用することで、発注先の作業が減ったからです。残りは、国県道や水部(河川・海など)、鉄道等のデータ整備になるので、あまり大きく変化しないデータとなり、データ整備費のコストが下がりました。
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小泉氏:もう一つは、各課の特定の業務で使用するGIS、例えば、公園台帳GISや建築確認用GIS、下水道管理GISという『個別型GIS』を導入する時にも、一から地図を整備するのではなく、共用空間DBのデータを利用することで、システム構築費が削減できるわけです。大体平均すると1システム当たり1000万円くらい、導入経費を安くすることができました。
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加藤:合計で7000万円以上の削減ができているわけですね。しかも、これからも新しく個別型GISを開発する場合には、常に発注費用が安くなりますよね。

小泉氏:はい。そうなります。

※本インタビューは全6話です

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