インタビュー

【元三重県知事 北川正恭氏:第2話】住民を忘れて「役所ファースト」「議会ファースト」

正しい地方政府は議会と首長が機関競争をすること

北川氏:これから正しく地方政府を実現していくためには、執行権を持つ首長サイド、もうひとつは決定権・審議権を持つ議会があります。この二元代表で機関競争していくのが民主主義の土台だと思います。民意を反映するのは、市役所ではないんです。民意の反映機関は、本来、選挙で選ばれた議会ですから。

 私は県会議員も、国会議員も知事もやりましたけど、県庁の改革は県庁だけではできないと思っています。議会にも改革してもらわないと絶対にできない。それで、そこにも本気で取り組みました。

県議会で徹底的にいじめられたが、それは素晴らしいこと

加藤:どのように変えるのでしょうか。

北川氏:知事になった時に県議会のボスがいましたから、徹底的にふたりで話をしました。「徹底的に県庁を変える覚悟がある。あなたは議会を変えたらどうだ」と言ったんですよ。

 また、その人が立派な方で、「本気か、知事?」と言われ、私も「本気だ!」と返すわけです。それで、このあと彼に議会で徹底的にいじめられましたが、それは素晴らしいことですよ(笑)。そういう関係性が正しい二元代表制なんです。

利益誘導の質問を議会ですることが恥ずかしいという風土ができた

加藤:どういうところに議会の変化を感じられましたか。

北川氏:たとえば、「労働組合から聞いたんですが・・・」とか、「農協と話をしてコメの値段が・・・」とかいう利益誘導の質問を、議会ですることが恥ずかしい状態になっていくわけですよ。

加藤:とても良いことですね。
北川正恭2-1-1

「『善処します』とか『前向きに』とか嘘を言うな」と部長に厳命

北川氏:だから、私も執行側である行政がしっかり向き合うために、議会で答弁する部長たちに「『善処します』とか『前向きに』とか嘘を言うな」と言って(笑)、「来た質問に対しては全力でぶつかって対話をしろ」って厳命したんですよ。

 そうしたら、部長たちもその指示に従ってくれて、議員に対して「それはできません!」みたいにガンガン言っていて、1年半ぐらい議会はガタガタになっているんですよ(笑)。でも、ガタガタになって新しい価値を生み出さない限り、そんなに簡単に変わらないんです。

執行部である自治体と議会の両方が変わらなければならない

北川氏:いままでは執行権があった自治体が有利だから、知事・市長執行部が強く、議会がお刺身についているツマ程度の存在だったのが、「地方分権推進法」、「地方創生法」、「まち・ひと・しごと創生法」ができてから、議会の持つ力が上がってきたんです。

 だから、政務活動費がつくし、その前は政務調査費がついたわけなんですね。これからはドンドン議会の権限が強くなっていくんです。

 執行部である自治体と議会は車の両輪なんで、両方ともが変わらないといけない。いま、都庁も苦しんでいるでしょ。東京都は執行部も議会も20年遅れていますよ。だから、こういう状態で小池知事が生まれたのは必然だったと思います。

 とにかく、地方議会に対して住民からの評価が低過ぎるんですよ。議会不要論は7割越えているんです。だから、「議会がどうするべきか、どうあるべきか」という風土に変わらないとダメなんですよ。

北川正恭2-1 地方議員評価

客観的な調査結果から論理的なアプローチを行なっている

議員には「議員と議会のあり方」を勉強してもらわないといけない

加藤:北川さんからご覧になられて、議会がより良くなるにはどうすべきだと思いますか。

北川氏:まず発想を変えないといけないですよね。執行部である行政があって、議会はそれに対する監視機能だとみんな思い込んでいるじゃないですか。でも、本当は政治、政策をしっかりやらなければならない。

 いままでと役割を変える上では、まずは形式要件の整備ですよね。例えば、議会基本条例を作るとか、一問一答形式にするとか、議会報告をするとかですね。こういうものは半分くらいが整っていると思いますね。

 しかし、手段を変えただけではダメなんです。実質要件の整備。本来、信頼されるべき民意の代表機関たる議会が、その使命を果たしているかというと、いま、全然果たしていないですよ。だからまず、議員と議会のあり方を明確に勉強し、意識を変えてもらわないといけない。

北川正恭2-2

地方議会議員の先進事例を共有していく

住民を忘れて「役所ファースト」「議会ファースト」

北川氏:議員個人の活動はいろんなことはやってらっしゃる。でも、議会全体としての活動は何かということも考えなければいけない。「ただただ、首長に嫌がらせをしている」というような、そういう悪いイメージがあるでしょう。事実、その通りのことが起きているんだから。

 そこを本当に変えないと、執行部が腐るんですよ。執行部がダメだから議会がダメ。そして、議会がダメだから執行部がダメなんですよ。それぞれが住民を忘れて「役所ファースト」であり、「議会ファースト」。議会が本気ではなく、馴れ合いで来ているところも沢山あるでしょ。

 私はこれを変えたかった。だから、三重県の改革はその両方の改革が相まって進めることができたと考えています。

地方行政と地方議会には『対話』と『善政競争』が必要

加藤:だとすると、全国の自治体と議会の関係を改善するためには、お互いが本気で『対話』をしていくということが重要なのでしょうか。

北川氏:はい。まず、どんどん対話していくこと。これが肝です。

 それと、『善政競争』と呼んでいるんですが、どこかが良いことをやるとそれを真似するところが現れるんです。「えっ! 三重県がやっているなら、俺のところもやろう」と愛知県がやったり、そういうことが波及していくわけなんです。

北川正恭2-3 マニフェスト大賞

価値のある取り組みを表彰することで波及させていく

北川氏:昔は変わらないことをもって、「議会、地方議員はこんなもんだ」、「市役所はこんなもんだ」というのがあったが、ドンドン『善政競争』で刺激し合って、変わりつつあると思います。

 地方議会もマニフェスト大賞で表彰されたところを参考にして、「うちもやろう」という『善政競争』に、弾みをつけてきていると思いますね。11年前にやった時の応募総数は221件だったのが、いまは2513件に増えてきているんです。

 そういうことがだんだん知れ渡ってきて、現在の選挙になってきているのを、私は大変喜んでいます。

※本インタビューは全6話です

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