インタビュー

【横須賀市 川名理惠子氏:第5話】仕事は人と人の関係で動くもの

川名理恵子 TOP5

仕事は人と人の関係で動くもの

加藤:お仕事されている時にどういうことを意識されていますか。

川名氏:気持ちを大事にしていますね。人事課で4年間、研修担当の係長をした時がありまして、新人研修の最後に、「私たちは法律に基づいて仕事しているけれども、仕事って最後はハートだよ」と言って、配属先に送り出していました。

 ドライに仕事をこなすことも必要だけれども、仕事は結局、人と人の関係で動くもので、熱い気持ちで取り組むと、いままで動かなかったものが動いたりするんです。

「仕事をこなしている」と思われたら 誰も協力してくれない

加藤:仕事の中で高いモチベーションを維持して、動かれていたんだと思うんですが、何がそれをさせたのでしょうか。

川名氏:面白かったからです(笑)。性分なんです(笑)。どこに行っても、自分のやるべきミッションを見つけることができるんですよね。おかげさまで、どこの部署に行っても仕事はやりがいをもって楽しくできる。やりすぎて周りが困るかも(笑)。

加藤:成果を出されている方の話をお聞きすると、泥臭く、何を言われても信念を持って向かっている方が多いと思っています。

川名氏:そうかもしれません。覚悟を決めて取り組む、生半可な仕事はしない、ってことでしょうか。
 「仕事をこなしているだけ」と思われた瞬間に、誰も協力してくれなくなります。「本当にこれが必要で、市民のためにこうしたいんだ」という想いが大事だと思いますね。

ハートで豪華客船を誘致した

加藤:具体的にハートで物事を動かせたとお感じになる経験にはどういったものがありますか。

川名氏:最初に経験したのは、客船誘致を担当していた時です。上司に、客船を誘致するように言われたんです。ただ、その部署では、それ以前に客船誘致を試みてうまくいかなかった記録がありましたから、「なんで私に?そりゃムリでしょ?」と思ったんです。

 それでも上司は「期待しているから」と言うので、客船「飛鳥」にターゲットを絞り、当時の係長と一緒に客船会社に足を運びました。先方も横須賀港を褒めて下さるのですが、誘致についてはなかなか進まないんですね。それでも、諦めずにその後も足を運び続けて熱意を伝えました。

 ある時、船会社の方から「いま、別件で横須賀に居るんですが・・・」と電話がかかってきたので、私はすっ飛んで迎えに行って、港を案内しました。そういうことを繰り返していったら、「一度、横須賀港に船を寄せましょう」と言っていただいて、客船「飛鳥」の誘致に成功したんです。横須賀港からもお客さんを乗せることとなり、クルーズも成功したら、他の船会社が逆に「横須賀港に寄りたい」と訪ねてくるようになりました。それが、私の役所人生の中で一番の成功体験です。

客船『飛鳥』初入港

客船「飛鳥」初入港

自治体の仕事の『だいご味』は 様々な分野の経験ができること

加藤:最後の質問です。地方自治体でお仕事されている中で、『だいご味』は何でしょうか。

川名氏:いろいろな分野の経験ができるっていうことだと思います。異動すると転職と同じで、一から学ばないと役にも立たない。私は医療も介護も過去に経験がなかったんです。いまは、他都市でお話しすることも多いですけど、専門職だと思われることが多くて、「実は私は事務職で、前の年まで図書館長やっていました」と言うと、すごく驚かれます(笑)。

加藤:職員の方がキャッチアップする力は本当にすごいですよね。そういうことができる能力の高い方が多くいるのだと思います。

川名氏:私はそんなに優秀じゃありません。その分、努力しないと何もできないと思っているんです。本当にすごい人っていますよね。「この人はなんでも知っている」みたいに思うすごい人に時々お目にかかります(笑)。

 それでも、私にできることを確実にやりながら、明るく楽しく仕事をしたいなと思っています(笑)。

川名理恵子5-2

加藤:その雰囲気が伝わってきます(笑)。長時間お時間いただいて、ありがとうございました。

川名氏:こちらこそありがとうございました。

編集後記

 川名氏の素敵な笑顔や話し方に『柔らかさ』を感じる一方で、内に秘める『強さ』も感じ取ることができた。「柔よく剛を制す」という言葉があるが、私は『柔』だけでは大きな成果を上げることは難しいと考えている。

 「柔よく剛を制す」という言葉があまりにも有名だが、『柔』と『剛』の位置をそっくり入れ替えたような「剛よく柔を断つ」という言葉も存在する。無鉄砲にこれを「矛盾だ」などと騒ぎ立てる気は毛頭ない。
 その両者の存在が意味する故は、『強さ』だけでなく『柔らかさ』も兼ね備え、「状況に応じて使い分けられるようになるべき」ということだと、私は勝手に理解している。

 かつて営業の仕事をしていた時でも、成績の上位数%に位置する営業マンは相手の微細な反応から心情を理解し、『強さ』と『柔らかさ』を使い分けていることが多かったと感じている。しかし、「言うは易く行うは難し」で、これを両立できる人は多くはないと感じている。

 官民問わず、多くの仕事では「コミュニケーション能力」を求められる。というのも、影響力が大きい業務になればなるほど、自分一人で完結できる仕事はほとんどなく、上司や部下、他部署、組織外の様々な人との関わりが生じるからだ。

 地方自治体で活躍している方に日々お会いしていると、ほとんど全ての方が『強さ』と『柔らかさ』を駆使し、周りを巻き込みながら成果を上げているように見えるのだが、川名氏もまさにその体現者だと強く感じ入るのである。

 いま、地方自治体を取り巻く状況は年々厳しくなっている。財政上の課題を抱え、説明責任を強く求められるようになってきた。他方、市民協働や官民連携など、業務の中においても、住民や外部との広く密な関わりが必要になってきている。その流れの中では、『強さ』と『柔らかさ』という武器が、いま以上に求められてくるのではないだろうか。

※本インタビューは全5話です

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