今村寛5

【福岡市 今村寛氏:第5話】スーパー公務員なんていないよね

これからしていきたいこと

加藤:これを記事として載せて、今村さんに何かあったら責任を感じますね(笑)。というわけで次のトピックに移ります。

 元々は町づくりが『だいご味』だと感じて、市役所で働き始めたとのことですが、少し時代が変わって来ていると思っていて、過去に比べて箱モノと言われるようなものを作る仕事が減ってきました。その中で今後、今村さんがしていきたいことは何でしょうか。

今村寛氏:今はですね、一番面白いのは人づくり。もう40過ぎたころから段々そっちの方が面白くなってきていて、財政課の課長の時も「こいつ、もっとこんな風に伸びないかな」みたいなことを思ったりしていました。

 だから、自分があと役所人生15年ぐらいの中で何かをしたいというよりも、今の20代30代のやつが40代になった時に、「どれだけ自分を越えられるような存在になっているかな」ということに関心があります。

 あと、もう一つがその派生ですけど、組織作りです。組織の風通しがもっと良くならないか、若いやつが活躍できるようなフラットな職場にならないか。そのために対話ができる、誰かが偉いとかじゃなくて、みんなが話し合って物事が決まるような文化が育たなければいけないと考えていますね

加藤:なるほど。

今村寛氏:それと、個人的に公務員の副業っていうのは、自分の中で面白いテーマとして考えていて、今ベンチャーの人たちといっぱい付き合っている中で、この人たちと一緒に仕事することができるのかと考えたときに、どんな風に自分の中に落とし込んで「やれるよ」と言えるかを考えています。

 地方公務員法第38条というのがルールとしてあるんですが、それは営利企業への従事等を「禁止」しているのではなく「任命権者の許可を受けなければ」という「制限」を加えているだけなので。

加藤:いずれ地方自治体の職員の方もどんどん副業をしていく流れになっていくと思いますし、それが良いことなんじゃないかなと思っているんですよね。

 時代の流れとしては、民間の企業でもどんどん副業OKだとか、産休とかも柔軟になってきつつあるじゃないですか、今まさに政府の働き方改革のようなプロジェクトもスタートしているので、もっとそれが大きく変わっていく。やはり、今後は組織から個に力が移っていくと思うんですよね。

 そうすると、地方自治体で本当に活躍している方であれば、個としての能力があるので、そこに依頼したいという仕事が舞い込んでくると思うんです。しかも、その舞い込んでくる仕事というのは公益性の高い仕事だと思っています。

 なぜなら、地方自治体の方に依頼される仕事というのは、地方自治体での経験を元に依頼されるものだと思うので、地方自治体と同じように公益性の高い活動を、副業としてすることになると思っているんです。それは時代の要請の中で、どんどん増えていくと思うんですよね。

今村寛氏:はい。その通りです。私も、実際外部でやっている出前講座の活動に関しても、有料で開催されているイベントに呼んでいただく場合は、福岡市役所に許可を取った上で、主催者に有償でお伺いするようにお願いしています。

 過去に培ったノウハウで人に色んなものを与えられるんだとしたら、「これは眠らせておくわけにはいかないよね」と思うんですよ。全ての公務員に眠らせてしまっているスキルがあって、それを活用するってことはすごく社会のためになるんじゃないかと思っています。

 課外活動に積極的に関わって、職務以外の場所でも自分の能力を開発、発揮し、成長していける人材は、公務員としてもさらに役に立つ人材になれるんじゃないかと思っているので、これからも課外活動を続けていきたいと思っています。

加藤:政府が主導して『働き方改革』を掲げるのであれば、民間よりも公務員が先に動いて前例を作るということもあっていいと思うんですよね。ちなみに副業ではなく、今村さんが市役所を辞めるっていう選択肢は考えられていないんですか(笑)?

今村寛氏:まあ嫁さんとの関係でなかなか難しいと思いますよね(笑)。まだそんなに勇気はありませんけど、自分と似たような人が3人ぐらいいて、3人で会社創ろうよって話が本当にあったらやるかもしれませんね(笑)。

 ただ、会社を創って役所を出るよりは、役所の中に軸足があって、副業としてそれが出来る世の中が一番良いと最近思っているので、副業が気になっているんです。

 自分が今役所の中にいるから新鮮な情報があって、人に話す時に「あーそうなんだ」って思ってもらえると思うんですよね。1年ぐらい離れてしまうと鮮度が落ちてしまうので、私も財政の話ができるのは来年ぐらいまでかなと思っています。

地方自治体職員・地方自治体に興味を持っている人へ伝えたいこと

加藤:最後の質問になります。地方自治体で働いている人や、地方自治体に興味を持っている若い方に向けて、何かアドバイスをいただけますか。

今村寛氏:私は発信が全てだと思っているんですよ。やっぱり今私がこんな風に動けるようになったのも、自分が情報発信して、発信した情報が届いて良い反応があるということが実感できたからなんですよね。

 だから、若い人、これから何かをやろうと思っている人は、なんでもいいから発信してみることですよね。自分が思っていることを友達に言ってみる。上司に言ってみる。

 言ってみて、最初は返ってくる返事が良くても悪くても、喜んでもいけないし、へこむ必要もない。それが自分の思っていることがかたちになる最初の一歩なんです。

 8年前にブログを始めたときは私も、もっとヒヨっ子だったし、その蓄積の中で皆に育ててもらって今があるわけだから、最初は思っていることを発信、言葉にしてみるということが重要だと思います。

加藤:アクションをすれば何かが返ってきますもんね。

今村寛氏:はい。必ず良いも悪いも誰かが言ってくれて、良いと思っている人は仲間になってくれます。見守ってくれたり、一緒に行動してくれたり。そして、そういう仲間ができてくると、動く時の勇気になったり、エネルギーになったり、自分が休みたい時に誰かが代わってくれたりとか(笑)。

加藤:それこそ、全国の自治体の中の上司の方も温かい目で見守ってあげたりしながら、適切なアドバイスをして関わってもらえると良いですね。

今村寛氏:あと、山形市役所の後藤好邦さんと話をして意気投合したんですけど。「スーパー公務員なんていないよね」って。やり続けていたら、いつの間にかいろいろなところに呼んでもらえるようになっただけで、長年やってきたからなんとなく人より少しアドバンテージがあるように見えるだけ。誰でもできることなんですよ。

 最初の一歩を踏み出してみる前に、「あんな高い山登れるわけないじゃん!」って言ったらどんな山も絶対に登れないので。まず一歩を踏み出してニ歩目三歩目と進んでいく中で、自分なりの山に登って行けると思うんですよね。だから、最初からスーパー公務員だなんて人はいないし、今だってスーパー公務員なんていないんですよ。

 スーパー公務員と呼ばれるような人は、自分がやれることをやりたいようにやって、結果的にそれを人から認めてもらえているだけだと私は思っています。

加藤:面白いですね。一読者の気持ちで純粋にお話を楽しんでしまいました。インタビューは以上となります。ありがとうございました。

今村寛氏:ありがとうございました。

シーサイドももち

シーサイドももち 提供:福岡市役所

編集後記

 今村さんに質問した時に驚いたことは、質問に対するレスポンスの早さである。今村さんの持つ柔らかい人間性の魅力と別の魅力である鋭さがそこにあった。

 インタビューを振り返る中で、対話というキーワードが最も強い印象を残した。今村さんは、facebookの友達申請は名刺交換のようなものだと言っていた。

 Facebookは月間17億人が利用しているが、それはつまり世界人口の約4分の1となる。そう考えると、既にインターネット空間はどこか別世界の一部ではなく、現実世界に食い込んできていると言えよう。

 地方自治体職員の方でも民間の方でも、もし、何らかの理由でまだfacebookのようなSNSを使っていない人がいるのであれば、今から始めてみるのも遅くはないかもしれない。そういう草の根の動きが地方自治体と民間人の相互理解と信頼を深めることの一助になるし、それだけにとどまらず社会全体を繋ぐことになる。

『地方創生』というと何か漠然とした、とてつもなく高い山のように聞こえるが、今村さんが言っていた「発信する。まず一歩を踏み出してみる」ということを皆ができるのならば、たとえ遥か先にそのゴールがあるとしても、いつの間にかそこまで辿りつけるような気がしてくるのである。

 今村さんが話をしている地方自治体の財政問題はとても大きな課題だと思う。ただ、財政出前講座で今村さんが伝えているのはそれだけではないのだろう。財政問題という題材を通して、今村さんが心の奥底から感じている対話の重要性が実感として伝わってくる。だからこそ評判が評判を呼び、財政出前講座の依頼が絶えないのではないか。恐らくそれが、今村さんが自らさらりと言っていた『哲学のような財政出前講座』という表現の真意ではないだろうか。

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2017/06/01

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