コラム

地方自治体は「みずほ銀行」以上に若手を登用すべき

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-みずほ銀行で34歳の支店長が生まれ、最年少の支店長になるという。私の家から車で5分程度の玉川学園前支店(東京都町田市)の支店長だということもあって、少し気になった。身近な地域というのは、少なからず磁力を持っているものである。

 みずほ銀行は単体で約30,000人の従業員を抱える大企業であり、簡単に文化を変えていくことは難しいはずだ。にも関わらず、新しい流れが生まれた背景には、トップや組織の危機感が存在しているのではないかと思う。事実、みずほフィナンシャルグループの佐藤社長から「銀行業において、慣行として行われてきた年功序列制度を徹底的に崩す」という発言がなされている。

 私は財政の厳しさが増し、変革を求められている地方自治体においても、優秀な若い人の登用を増やすべきではないかと思う。その理由は3つある。

チャレンジする人がチャレンジする組織を作る

 1つ目の理由は、チャレンジする組織にするためだ。これからの地方自治体は、さまざまな課題や、新しい技術などの時代変化に対し、チャレンジできる組織でなければならない。優秀な若手の強みの一つには、変化への適応能力がある。組織は個人の集合からなりたっていることを鑑みると、チャレンジできる若手が重用されることが必要なのではないだろうか。

年齢が理由で人財を眠らせることは「組織の損失」

 2つ目の理由は、年齢というフィルターで優秀な人材を眠らせてしまうリスクをなくすためだ。プロとして生活を賭け、凌ぎを削る厳しい将棋の世界でも、14歳の藤井4段が公式戦では現在16連勝中であり、非公式戦であったが、かつて七冠を手にした羽生名人にも勝利した。

 組織には必ず年齢を超えて成果を出せる人間がいるはずだ。だとすると、年齢という理由で人財を眠らせてしまうことは、組織の損失ではないだろうか。もし、藤井4段が年齢によって、プロになることができていなかったとしたら、プロとしての公式戦16連勝という成果は生まれなかったのである。

抜擢人事が人を育てる

 3つ目の理由は、抜擢人事による育成の効果が長期に渡って作用し、長期的に生み出す成果を大きくすることができるからだ。

 人は能力を伸ばすことによって、ポジションを任されていくのだが、その一方で、与えられたポジションが人を育てている部分もあるのだ。結局、『仕事』の能力を伸ばすものは『仕事』なのである。もし、前述の藤井4段が「あなたは中学生だから、中学生とだけ戦いなさい」と強いられていたとすれば、棋士としての力は今ほど伸ばせていなかっただろう。

自治体は民間企業よりも育成にかけた力がロスされない

 公務員の退職率は低い。つまり、公務員が早期に能力を伸ばすことができれば、退職までの間、長期的に成果を出し続けることになる。民間企業に比べて、育成へ費やされたパワーがロスされることは少なく、ダイレクトに成果に反映されるのではないだろうか。

 また、抜擢人事による育成効果は他の若手にも波及する。優秀な若手は、年長者と肩を並べ、同じ境遇の中で得た経験を、同世代やさらに下の世代に伝える媒介者にもなり得るのだ。年齢が近い者同士には少なからず強固なつながりがある。若手の抜擢人事によって、トップと若手をつなぐハブが生まれるのである。

若い人を登用するデメリットなど一要素に過ぎない

 逆に、若い人を登用するデメリットとしてはどういったことがあるのだろうか。「DAIAMOND ONLINE」の記事によると、最年少支店長が生まれた『副作用』と題して“「年配の経営者が、自分の子ども、下手をしたら孫に近い年齢の支店長に対して、事業承継のようなデリケートな相談をするのか」(メガバンクの中小企業営業担当者)”という声があることを紹介していたが、この心配は杞憂に終わるだろう。

 もちろん、年齢というフィルターによって、時に社内外で損をすることもあるかもしれない。しかし、それは年齢という一要素に過ぎない。「話し方で得や損をする」、「見た目で得や損をする」という、普段起きている様々な項目のなかの一つとして年齢が入るのだろう。また逆に、若い支店長ということで、一目置かれることもあるかもしれない。

公務員はプロとして仕事をしている

 年長者が敬われる文化は良いことだと思う。しかし、年齢は職場の人材配置において重要視されるべきことではない。

 サッカー日本代表や、野球の日本代表は年齢では決まらない。選出されなかった選手が、選出された選手に対して「あいつはまだ若い」などと言うこともないだろう。少なくともプロスポーツ選手は、「自分たちが能力で判断されていること」、「若い選手でも自分よりすごい選手がいること」をどこかで受け入れているからだ。

 公務員もスポーツ選手と同様に、お金をもらってプロとして仕事をしている。その上で、もし、若くて能力のある人財の台頭を阻害するような文化やルールが残っているのであれば、まず変わるべきはその文化やルールかもしれない。

 地方自治体を取り巻く環境が厳しく変わってきている今、求められる職員像やその配置についても変わっていくべきではないだろうか。

記=加藤年紀

株式会社ホルグ代表取締役社長。株式会社ネクスト(東証一部:2120 ※現「株式会社LIFULL」)に2007年4月に新卒入社し、営業グループマネージャー、WEBプロモーションにおけるグループマネージャーなどを経て、2012年5月に同社インドネシア子会社『PT.LIFULL MEDIA INDONESIA』の最高執行責任者(COO)/取締役として出向。子会社の立ち上げを行い、以降4年半ジャカルタに駐在。2016年9月に同社退社。

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