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コラム

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地方公務員の副業の可能性~民間企業には公益性がないのだろうか?~

 「官民の人材流動化が必要だ」。地方自治体のトップからよく聞く言葉である。流動化といっても大きくは2つに分けられる。1つは、民間人から公務員になる流れ、もう1つはその逆、公務員から民間人という流れである。

民間人が公務員になるケースは増えている

 現状、公務員と民間人の間にはまだまだ壁があると言えるだろう。だが、地方自治体による民間人の受け入れは、進んで来ている印象だ。たとえば、誘致を行う部署にビジネス感覚の強い民間人、専門的なスキルを持つ弁護士や公認会計士、もっと面白いところでは、プロのお笑い芸人として活躍していた方を採用しているケースもある。
 また、採用される個人の立場としても、公益的な仕事に就きたいという希望をもつ人が増えている。そういう意味では、『採用する側』と『される側』の利害が一致して、その傾向が今後も強まっていくようにみえる。

公務員が民間企業に転職するケースはまだ少ない

 一方、公務員が民間企業に転職するというケースはまだ少ない。これは、先ほどのケースのようなインセンティブが、『採用する側』と『される側』両方に働いていないからであろう。まず、『採用する側』である民間企業からみると、公務員を転職で受け入れる際のイメージが湧かない。そもそも、特定の業種を除き、民間企業にいる人間が、自治体の仕事を知る機会が多くあるわけではない。その結果、行政にどのような仕事があり、その経験をどのように民間で生かせるのか、というイメージが及ばないことも多々あるのだろう。
 逆に、公務員側から見た時にも、好んでその地位を捨てる必要はないということもある。『結婚したい相手の職業に関するランキング』では男女ともに、常に公務員が1位を奪取している。羨ましい限りである。地方に行くと、魅力的な就職先は「銀行か役所」と言われるぐらいだ。特に地方公務員は地方になればなるほど、その地域の中のエリート層が従事している。逆にいうと、それだけ恵まれた公務員という職を辞してまで、民間企業に転職する必要性も生じづらいのだ。

神戸市役所が進める新たな取り組み

 そんな中、地方公務員がそれぞれの地域社会に対して、さらに大きな役割を果たす第一歩を踏み出す自治体もでてきた。神戸市役所では、職員が公益性の高い組織で副業に就きやすくするため、4月から独自の許可基準を設けるという。現在、地方公務員の副業は『地方公務員法38条』によって制限されているが、時代の中でその解釈に向き合う必要が出てきたのかもしれない。率直に、この神戸市の試みは、公務員の人材流動性を高める素晴らしい取り組みではないかと思う。

地方公務員が民間企業と副業で関わることは本当にいけないことか

 この神戸市役所の試みでは、その目的は「職員の働き方を多様化し、外部での経験を公務に生かして市民サービス向上につなげる」としている。また、NPOなどの『公益性の高い』とされている組織に対する副業を想定しているようだ。
 もちろん、ものごとには順序があるのだとは思うが、将来的には一般的な民間企業などにも、その枠を広げて欲しいと考えている。なぜなら、NPOと自治体の距離は、民間のそれに比べると近い。目的は『外部での経験を生かす』ということであるが、今、自分がいる環境から、より異質な環境を経験する方が、人はそれを糧にできるからだ。

民間企業も公益に貢献している

 本質的な話に立ち戻るとすれば、一定規模以上の民間企業よりも、世の中に役立っているNPOなどの公益性の高い組織というのは、そんなに多く存在するのだろうか。ある市長が「①100人雇用している企業」「②100人が活動するNPO」というこの2つのうち、どちらか1つのみを自分の市に呼び込むことができるとした場合、多くの場合は①を選ぶのではないだろうか。
 民間企業を『営利』と切り捨てるのは簡単だが、企業は人がお金を出してまで欲しがるものを世の中に提供している。その上、雇用を生み、少なくない税金を納めているのである。そのお金は言うまでもなく、人を救う原資にもなる。企業だから公益性が低いと、簡単に結論づけることはできないはずだ。

民間企業に関わる経験が、公務員の人材流動性を高める

 そして、民間企業に公務員が関わるメリットは他にもある。公務員でありながら、民間の文化を理解することで、民間企業への転職に対するハードルを下げ、公務員の流動性を高めることにつながるのではないか。また、そういう経験から週末起業、もしくは独立起業を行うような可能性もあるだろう。
 私は、公務員の副業に対して、独自の許可基準を設けることは、新たな『公務員のリソース』を生み出し、世の中の幸福度を高める可能性を秘めていると思う。だからこそ、その可能性を最大化する選択肢として、『一般的な民間企業』と関わっていくような考え方があっても良いのではないかと感じるのである。その地域において、「地方公務員」というのは、限られた貴重な資源の一つではないだろうか。その能力を行政組織の中だけでなく、地域の現場でも役立ててもらうことが、これからの時代では求められていくように思えるのだ。

加藤年紀
株式会社ホルグ代表取締役社長。株式会社ネクスト(東証一部:2120)に2007年4月に新卒入社し、営業グループマネージャー、WEBプロモーションにおけるグループマネージャーなどを経て、2012年5月に同社インドネシア子会社『PT.Lifull Media Indonesia』のCOO/取締役として出向。子会社の立ち上げを行い、以降4年半ジャカルタに駐在。2016年9月に同社退社。

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