コラム

インターネットと地方の教育

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近年、日本の学力が落ちているという話をよく耳にする。その原因としてよく聞こえてくるのは、「ゆとり教育」、「相対的貧困率の上昇」、「少子化」など、日本全体の課題が根本にあるようだ。日本が多くの子供にとって学力が伸びにくい環境になっているとするならば、我々大人たちの責任は重いと言える。

一方で、環境の変化は悪いことばかりではない。学力の向上において今と昔とで圧倒的な違いになり得る環境の変化の一つに「インターネットの普及」がある。そしてこのインターネットは教室のあり方を変える可能性を秘めている。

家で学び、学校で教え合って理解を深めるという発想

ビデオ教育を推進するサルマン・カーン氏のTEDプレゼン動画「ビデオによる教育の再発明」をご存じない方は、ぜひ一度観ることをおすすめしたい。これまでの学校教育の常識は、「教室で学び、家で宿題をして理解を深める」ことだが、これを逆転させて「家で学び、教室で教え合って理解を深める」ことを提案している。

私だけでなく、多くの人が疑問に感じてきたことだが、教室では勉強ができる子もできない子も、同じ内容を同じスピードで学ばせるのはさすがに無理がないだろうか。もしそれこそが平等で正しいことだと考える人がいるならば、はっきりとそれは間違いだと言いたい。大切なことは、30人に「同じことをする」ということではなく、30人に「一人一人適したことをする」ことだ。

※そのことをよく表している記事があるので、納得が出来ない人はこの記事「「平等」と「公正」の大きな違いが1秒で納得できる画像」を参照されたい。

様々な新しい学習方法の台頭

いまや世界中で教室を展開している公文式の勉強方法は、まさにこの方式を取っている。決められたカリキュラムを「平等」にこなすのではなく、得意な教科はどんどん次のレベルに行くことができるし、苦手な教科は理解するまで先に進むことができない。一人一人の、各教科における最適な学習方法がここにあると言える。

リクルートの「スタディサプリ」というスマホで学習できるサービスがある。子供の学力が各家庭の経済力に依存しないように、月980円(税抜)という低価格で一流の教育が受けられる機会を提供している。そして2016年4月のプレスリリースによれば、「高校においては全国5,000校のうち700校、小中学校においても15の自治体、50の小中学校に導入」されている。

かつて東京初の民間人校長として有名になった藤原和博氏が推進する「SSS(スーパー・スマート・スクール)構想」というものがある。詳しくは「スーパー・スマート・スクール」の全貌をご覧いただきたいが、その取り組みの中で注目したいことの一つが、「スマホ活用による個別最適化学習」だ。奈良県の一条高校と共に、スタディサプリを使った学習の最適化を進めている。

また千葉県千葉市では放課後の学びの機会を充実させる施策の一つとして、「市内5~8カ所程度の学童保育で、小学4年生100人以上の児童を対象にスタディサプリを導入する」という。こちらも詳しくは「千葉市ではじまる「公教育改革」の試み」をご覧いただきたい。余談だが、この記事に取り上げられている熊谷市長のことをもっと知りたければ「市長って本当にシムシティが上手いの? 千葉市長とガチンコ勝負してみた」をぜひご一読いただきたい。

こういった取り組みをより進めていくためには、各教育機関が努力するという話だけではなく、やはり政治や行政が抜本的な改革に乗り出す必要がある。具体的に言えば、教育バウチャー制度や、教師の360度評価、雇用制度改革のようなものを実施することで、競争の原理を働かせてマインドを変えるということである。このあたりは、荘司雅彦氏の「教育格差を是正するには?」を参照されたい。

「優秀な人材は都市部に集まるから地方にできることは限られてしまう」という問題は、教育分野においてインターネットが解決できることは多いように感じる。冒頭で紹介したサルマン・カーン氏の話にあるように、まずは発想の転換をして既にあるツールをうまく活用していただきたい。

小野寺将人
湘南在住。不動産情報ウェブサイト運営会社、お出かけ情報ウェブサイト運営会社にて営業・企画職を経た後、現在はヤフー株式会社にて企画職に従事。

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